うたらぼ

誰でも無難に良い音になるMIXの工程

おいちゃん クリエイティブ, 音響, #MIX, #マルチトラック編集, #リモートアカペラ, #音響,

どうもはじめまして。名古屋アカペラサークルJP-actに所属しています4回生のおいちゃんです。よろしくお願い致します。さてさて今回は普段どんな風にMIXをしているんですか?という声をちらほら聞く機会があるので大まかにではありますが、普段の工程を公開したいと思います。

まずは皆さんが普段リモート音源であったりマルチトラックでの録音であったりを行った音源データに対して何をしますか?僕はまずはノイズ除去です。何故ノイズ除去をするのか。それはシンプルな理由で、1つずつの音源はさほどノイズが気にらならなくても数が増えれば気になるレベルになり得る事があるためです。

では次にノイズの種類について軽く説明していきましょう。皆さんはノイズにも色々と種類があるのはご存知でしょうか?、砂嵐のようなザーーといったホワイトノイズ(ピンクノイズやブラウンノイズなどといった同じ類の少し異なる物も存在する)、口の発声時に生じるキュルキュルといったリップノイズ、録音時の不手際によるカチッといったクリックノイズ、意図していないボワッとする空間(Reverb)音、パソコンなどの振動がマイクに伝わる事で生じるブーンといったハムノイズ、息がマイクに掛かることによって生じるボブといったポップノイズ、マイクの感度が高すぎる時に発生するバリというクリップノイズ(いわゆる音割れ)などです。ここではあくまで僕が録音をする時に特に気をつけるノイズを例に挙げており、他にもノイズの種類には沢山の物があるので是非1度他にもどんな種類のノイズがあるのか調べておくと良いでしょう!

またこれらのノイズを雑音という1つの単語でまとめてしまうと、本来伝えたかったノイズを的確に相手に伝える事が出来ない可能性があり、その結果、後輩育成の際に正しく教えられない。こうして欲しいという要望を上手く相手に伝えられず違う所が削られてしまう。といった問題が発生し得るので、是非普段から正しい名前を使って会話をしましょう!これをするだけでもかなりノイズに関する理解が深まるので是非ノイズはノイズと表現するのではなく種類で伝えるようにしましょう!

ノイズの種類に関してある程度理解を深めたところで、これらのノイズに対してRepair処理をしていきます(いわゆるノイズ除去の工程)。Repair系のソフトウェアは色々な物が世の中にありますが、僕は普段iZotope社のRX 7を使用しています。ちょくちょくセールをしていて、かなり安い金額で買える事があるので、もしその機会を見かけたら是非ご購入してもらうと今後の何かに役立つと思います。ただし、これらのツールは100%良い結果をもたらすとは限りません。あくまでそれなりの精度で修復してくれるだけなので音質が劣化しうる可能性があるため極力使わなくても大丈夫な環境で録音される事をお勧めします。

RX 7 standardのプラットフォーム

次の工程はoutput(Master)にLimiterをかけます。Limiterって何?という方が居ると思うのでLimiterについても解説していきます。

Limiterとは読んで字の如く制限するものです。多くの方は具体的に何を制限するの?と思われるはずです。しかしそんなに気負わずに覚えて欲しいのですが、Limiterが制限しているものは音量の最大値です。全てのDAWなどの音源編集ソフトウェアに共通して言える事なのですが、編集が終わったデータをwavなりmp3なりに書き出してデータを扱う際に必ず守らなければいけないルールがあります。そのルールがMaster(最終的に出力される音源)の音量が0dBを上回ってはいけないというものです。凄く当たり前ですが、何故上回ってはいけないのかというと音割れ(クリップノイズ)が発生してしまう為です。それを防ぐ為に書き出し時に大抵のDAWでは0dBを超えると警報が鳴るように出来ています。なのでクリップノイズが発生しないようにMasterの音量を0dBを超えない設定を作り出す為、Limiterで全ての音声ファイルの再生時点での音量の和の最大値を決めてあげるという作業になります。どうやって最大値を決めているかというのも凄く単純で、ある設定した音量を超えた場合にその超えた部分に対して無限に限りなく近い値で割ってあげるといったものです(いわゆる圧縮です)。なので厳密に0dBになっているわけではなく、限りなく0dBに近いもので小数点何位以下を切り捨てているという原理です。具体的に言えば、Masterの最大値が1.1dBであったとしましょう。それに対して割る値を無限に限りなく近い値にした場合最大値は0.00000000000000000000…….4266といったような値になり小数点第5位以下をを切り捨てて0dBとしているという機能です。この機能は非常に優秀ですが、音楽的な強弱であったり、クレシェンドのような音の推移を出来るだけ細かく表現する為にはこの機能には頼らず、一番音量を出したいところだけが0dBとなるように持ってくるのが無難です。(例 : ラスサビ)

MasterにLimitterを挿入した図

続きまして、Limiterの設定が完了したら次はそれぞれの音源が入ったチャンネルにGateをかけます。Gateとは余計なノイズを出来る限り聞こえないようにするという機能です。これもLimiterと考え方が近いです。Gateはある一定の音量以下になると、限りなくマイナス無限大の音量に下げるといった機能です。これを説明するにはまず音声のSN比を理解できる必要があります。SN比とは、信号(signal)と雑音(Noise)の比の事を指します。アカペラのマイクにおける具体的な内容で言いますと、聞こえてて欲しい声の部分と声以外の雑音部分の比率という事です。このSN比を考慮しながらGateの閾値をを決める事は実は極めて難しく、閾値を小さくしすぎるとノイズが聞こえている時に音量が下がらなかったり、逆に閾値が高すぎると歌っているコーラスが落としサビなどで音量を落とすと閾値に反応して音が一気に入らなくなります。なのでこれは値を設定するのが大変難しい為是非1人で抱え込まず誰かと相談したり、SN比を見ながら閾値を決めれるソフトウェアなどを使用すると良いでしょう。

各チャンネルにGateを挿入した時の図

既にこれらを終わらせるだけでもかなりノイズが少なくクリアな音で確実にエンコード(データを書き出す事)をする事が出来ます。次に行っていく工程はEQingCompressionです。この操作に関しては今回は僕が普段やっているやり方を紹介するだけですので、興味を持たれた方は色々な方が色々な価値観ややり方を提唱しているので是非Youtubeで動画を検索してみて下さい!それでは僕のやり方を説明していきたいと思います。

まずはEqualizer(イコライザー)とCompressor(コンプレッサー)について説明します。Equalizerは音声信号のある特定の周波数帯域に対して音量を上げたり下げたりする事が出来るもので、Compressorは音を圧縮する事により音量の大小の幅を狭めるものです。Compressorの仕組みは実はLimiterと一緒で閾値以上の値をどう圧縮するか(どの値で割るか)というものです。なのでCompressorの割る値を限りなく無限大に近い値に設定するとLimiterになるという事ですね。

次にこれらの使用方法について説明します。まずはEqualizerです。これは上記でも説明したように各周波数帯における音量を操作できるというものです。例えば500Hzを-5dB操作する事が出来ます。これが出来ると何が良くなるのかというと、音を棲み分ける事が出来る様になります。音を棲み分ける事が出来るとどうなるのかというと、音のマスキングが起きない為それぞれの音がしっかり聞こえるようになります。そもそも音のマスキングって?という方もいらっしゃると思いますので軽く説明をすると、音のマスキングとは大きい音がより聴こえて小さい音が本来の物理量よりもより小さく感じてしまうという事です。例えば自分の前をバイクが走り去ったとしましょう。その際に必ず皆さんバイクの音に注目がいくはずです。その近くで友達と話してもバイクの音が大きくて声が聞こえないなんて事もしばしばあると思います。でも物理量で考えたら意外と音量差は10dBくらいなのです。これは何故かというと1番大きい音がより大きく聞こえて、それよりも小さい音はより小さく聞こえている為です。これを音のマスキングと言います。話がそれてしまいましたが、Equalizerを使う事でこの音のマスキングの影響をある程度防止する事が出来ます。例えばコーラスの1人1人の音を混ざらずにしっかりと独立して欲しい時や、ベースの音とパーカスのバス(キック)の音をお互いにしっかり聞こえるようにする時に使うとより効果的です。

Equalizerを挿入した時の図

次にCompressorです。これはLimiterの時から言っているように圧縮するものです。ただこれらはただ圧縮する以外にもどのようなタイミングで圧縮をするかという設定も出来ます。一般的にこれだけ覚えておけばいいというものをはattackとreleaseとoutput gainです。attackは圧縮が始まるまでの時間です。つまりこの値を大きくするほど時間が経ってから圧縮が始まり、値を小さくするとすぐに圧縮が始まります。次にreleaseは圧縮が始まってどのくらいの時間が経過して圧縮が完了するかというものです。この値を小さくすると圧縮をする時間が短時間になり大きくすると圧縮する時間が長くなります。最後にoutput gainは圧縮した音量を上げたり下げたりする事が出来ます。ところで皆さん。Compessorは音量を圧縮しているのに何故音量が上がっているのか疑問に思いませんでしたか?僕は最初の頃に凄く理解に苦しみました。何故ならどんなに考えてもCompressorは音を圧縮するので音量は減る一方だからです。上がるものといえば音圧(音の密度)くらいだろと思い、そう考えたら音圧が上がってる?けど音量は上がってない????と昔の僕は凄く頭を悩ませていました。それを解決したのがこのoutput gainでした。圧縮したものの音量を上げるものがこれでした。圧縮して音圧を高めて、高まったものの音量を上げる。この工程を通して音は太く濃くなります。なので是非僕と同じようにこんがらがらないように注意して下さい。

Compressorを挿入した時の図

僕は普段上記で紹介したGate、Equalizer、Compressorの機能を1つにまとめたiZotope社のNectar 3というプラグインを使用しています。このプラグインのいいところは音声信号の波形を視覚的にわかりやすく表現してくれているので、直感的にこれらの機能を操作出来ます。特に初心者の方は最初のハードルを越えて頂く為にも是非使用してみて下さい。また上記に紹介したもの以外にもDe-esser、Harmony、Delay、Demension、Reverb、Saturationなどの機能があるためアカペラをする方には特に重宝される機能が全てついているので是非気になった方は調べてみて下さい。

iZotope社のNectar 3を挿入した図

次の工程はFaderで音量差を調整し、PANで音の位置を決めます。Faderは皆さんご存知の通り音量を調節するものです。PANも実は結構な方が知っていると思うのですが、イヤホンのLRから出てくる音の割合ですね。例えばイヤホンのLから出てくる音量とRから出てくる音量の比率を4:6にした場合に音が少し右にズレます。これは0:10にすればRからしか聞こえず、7:3にすればL45に聞こえます。この値は皆さんが好きなように調整されればいいと思いますが、おすすめは、ベースR5、コーラス、top : L30、2nd : R30、3rd : L15くらいにして、リードとパーカスを触らすCenterを持ってくると何となく立体感が出ておすすめです。

次が最後の工程です。最後はFXです。はい。投資の話ではありません。これはいわゆるエフェクト(ReverbやDelay)の量を決めるトラックです。これらのエフェクトは最終的な味付けで、人それぞれ好きなエフェクトというものが分かれます。そんなのなくて良いという方も居ますし、絶対に必要だ!という方もいます。それは個人の自由で色々なエフェクトを使って調整してみて下さい。今回は僕が普段使っているReverbとDelayについてだけ軽く説明して終わりたいと思います。ReverbとDelayはカラオケで言うエコーを作り出す為の2つのエフェクトです。Reverbは残響感、Delayは反響感です。Reverbは長ーいトンネルで声を出すと遠くに向かって声が飛んでいくのが分かるかと思います。あのボワーっとした感覚がReverbで、Delayはやまびこで、ヤッホーと言ったらある一定の間隔でヤッホーと返ってくるものです。例えばDelayをつけてパカラと言うと、何度もパカラという声が一定の間隔で作られるので、まるで馬が走っているかのように感じるので是非遊んでみて下さい。

ReverbとDelayをsendで作った後の図

最後に締めくくりとしてMIXの工程順をまとめて終わりにしたいと思います。

  1. ノイズ除去
  2. Limiter
  3. EQing & Compression
  4. Fader & PANing
  5. FX

です。これだけで誰でも無難な音になります。今回はこういう順番でこれを使っているという工程を紹介させて頂きましたが、次回以降は実際にそれらの工程で設定している値を実際に決定したり、使用する際にどういう観点を聞いて使用しているのかといった上手く使用するコツを紹介出来ればと思っています。また、誤字脱字、間違ってるのでは?というご指摘がございましたら遠慮なく申し出て下さい。自分も結構間違ってる事があるので是非一緒に沢山の事を学んでいけたらと思っております。以上ご精読ありがとうございました。

おいちゃん

主に音響に関するテーマを展開します

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