うたらぼ

コロナ禍におけるアカペラ活動調査結果と『うたらぼ』開設にあたって

たっきー その他, #アンケート, #リモートアカペラ, #多重録音,

先日7月20〜23日にかけてコロナ禍におけるアカペラ活動実態や意識に関する調査を実施し、たくさんの方々のご協力のおかげでなんと1,000名を超える方々から回答をいただきました。
このたび、アンケートの集計結果を全105ページにわたる分析レポートにまとめましたので公開いたします。
(そもそもこの調査を実施した詳しい経緯や個人的な思いなどについては機会があれば後日まとめようと思っています)

調査概要

本調査の背景と目的

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い対面でのアカペラ活動が困難な状況下にある中で、現在アカペラ界ではライブやイベント・サークル活動はもちろんのこと、バンドで集まって練習することもままならない状況が続いています。

日本のアカペラ文化は現在でも大学サークルが活動の中心となっていることから、4年でプレイヤーの多くが入れ替わったり先輩から後輩へ代々ノウハウが受け継がれてきた背景もあり、コロナ禍がこのまま長期化した場合アカペラ人口の減少やアカペラ文化自体が衰退の危機にさらされる可能性も否定できない中で、今こそ新たなアカペラのやり方・楽しみ方を考えていく必要があるのではないかと考えています。

本調査では現在のアカペラーの対面および非対面での活動実態や考えについて聴取し、今アカペラが楽しめない状況にいる人が抱えているハードルやどのような情報や行動が求められているのか、さらにはコロナ禍におけるアカペラの新しい楽しみ方の兆しなどを明らかにした上で、一人でも多くの人がアカペラを楽しむことができるようなアクションに繋げていくための基礎材料として、また今後のアカペラシーンの活性化に役立てていくために広く活用可能な共有知とすることを目的としています。

調査方法

調査手法:インターネットによる無記名アンケート調査
実査期間:2020年7月20〜23日
有効回答数:1,007サンプル

回答者属性

今回の調査では徳島・山口・大分を除く全44都道府県から有効数1,007サンプルの回答が集まりました。内訳を見ると男女比はほぼ半々、学生:社会人比は概ね6:4ですが、4年目以下では女性、6年目以下では男性の比率がやや高くなっています。学生の大半はサークルに所属、社会人は社会人サークル所属者と無所属OBOGが概ね同数の構成となっています。
地域別で見ると大学やサークルの数が多い東京都の381人を含む関東地方が過半数を占めており、次いで近畿、東海、東北の順となっています。

調査結果

現在のアカペラ活動状況

対面でのアカペラやサークル活動はほとんどできていない

現在の活動状況をみると、コロナ感染の第二波が広がり始めていた7月下旬時点では9割の人が対面のアカペラ活動ができていないという実態が明らかになりました。また、オンラインを含めたアカペラ活動全体に広げても7割の人がほとんど活動できていないと回答しており、学生と社会人を比較するとアカペラが全くできていない人は特に学生層に多いことがわかりました。
現在のアカペラ活動の満足度も平均33点と低く、割合では10点以下と回答した人が最多となっています。
さらに所属するサークルも活動が中止または大幅に制限されているサークルが9割以上を占める結果となっており、全国でアカペラサークルの活動がほとんど行えていない現状が浮き彫りになりました。

3人に2人は非対面アカペラを経験、全体の4割が現在も継続

対面で歌えない中で広がってきているリモートアカペラや多重録音といった非対面でのアカペラ活動は全体の67%の人が経験しており、また現在も続けている人が全体の40%を占めています。
内訳としてはリモートアカペラが最も多く全体の半数以上が経験済み、多録経験者も4人に1人となっています。作品の公開先はTwitterやYouTubeが一般的なようです。

録音・編集環境のトップはスマホ+イヤホンマイク

非対面アカペラの制作環境に関する項目では、録音ではイヤホンマイクとスマートフォン・PC本体のマイクが合わせて7割、音源・動画撮影でもスマホが最多を占める結果になりました。
動画編集環境もPC上の無料ソフトやスマホアプリのユーザーが多く、SNS上で見かけるリモートアカペラや多録の動画では本格的な機材や編集環境を用いたものが目につきがちですが、実際には手元にあるスマホやPCの環境でカジュアルに楽しんでいる人が多数派のようです。

非対面活動ができているかどうかが現状満足度に大きく影響

現状のアカペラ活動への満足度を見てみると、ほとんどの人が対面で歌えていない状況下でも非対面のアカペラ活動ができている人は平均43点と、できていない人の平均26点と比べて15ポイント以上高くなっており、リモートアカペラや多録といった非対面でのアカペラ活動ができているかどうかが現状の満足度を大きく左右していることが明らかになりました。

非対面アカペラを始めたくてもできない一番のハードルは「やり方がわからない」

しかしながら、全体の4人に1人は非対面アカペラに興味があるが実際にはまだ始められていない現状も見えてきました。その理由のトップは「録音やミキシング、マスタリングのやり方がわからないから」、次いで「撮影や動画編集のやり方がわからないから」と、始めたくてもやり方が分からないため挑戦できていないという人が多数いるという結果が出ており、コロナ禍で一人でも多くの人がアカペラを楽しめる状況を作るためにはこのハードルを解消することが課題となってきそうです。

コロナ禍をきっかけに非対面アカペラを始めた人の4割は既に離脱

さらに、もう一つ着目しなければならない現実も見えてきました。
コロナ禍で対面アカペラができなくなったのを機に新しくリモートアカペラや多録を始めた人は全体の55%を占めたものの、そのうち42%は既に活動をやめてしまったと回答しています。
その理由としては「対面で歌った時のような楽しさが味わえなかった」「想像以上に手間や時間がかかった」「納得のいくクオリティに仕上げるのが困難」の3つが特に大きく、非対面のアカペラをどのように楽しむかや手間を減らしつつクオリティを上げるためのノウハウが必要とされている現状が見えてきました。

リモートアカペラや多録の基本的な楽しみ方の情報が求められている

以上を踏まえたうえで現状のアカペラに対するニーズの調査結果も併せて見てみると、リモートアカペラや多録に関しては「音源の基本的な録音・編集のしかた」「非対面での練習方法」「必要な機材やソフト、環境の整え方」など、まずは“基本のき”となる情報が最も求められているという結果が見えてきました。
また、アカペラ界に求められているサービスでも「コロナ禍におけるアカペラの新しい楽しみ方をまとめたサイト」が2位になっており、こうした情報の集約の必要性が見える結果となっています。
なお、1位は「透明なアクリル板で人数分のブースが仕切られた対面練習可能なスタジオ」ですが、アカペラ練習用のスタジオも徐々に感染対策が進められており、いずれこちらもまとまった情報を提供可能になるのではないかと考えています。

現状の不満や新たな可能性:自由回答分析結果から

また今回のレポートでは前回速報時の内容に加え、コロナ禍での現状の不安・不満やリモートアカペラで感じた新たな可能性についての膨大な自由回答をまとめあげ、KH Coderを使ったテキストマイニング(共起ネットワーク分析)やアフターコーディングによる分析を新たに行いました。
なお、PDF版レポートでは自由回答も回答内容別に集約して掲載しています。

リモートアカペラや多録の長所は「生よりも完成度が上がること」

リモートアカペラや多録の長所についての設問では、録り直しや編集が効くことで生よりも完成度が上がるという内容がトップを占めました。
他にも場所や時間に関係なくできることや、普段歌えない人と一緒に歌えるような新たな活動機会ができたり、録って聴いてを繰り返して自分の歌と向き合うことが実力アップにつながったと感じている人も多いようです。

現在の悩みは学生は「モチベーション低下」、社会人は「温度差・価値観の相違」

今抱えている悩みや不安・不満の項目を見てみると、学生層ではモチベーションの低下が特に顕著で、特に4年生を筆頭に学生生活の晴れ舞台を失ったことへの未練や、環境・経済的にリモートアカペラなどの活動ができない(家で声が出せないなど)という不満、サークルの今後の運営に対する不安などが特に大きくなっています。
一方、仕事や家庭環境などさまざまな立場の人がいる社会人層ではメンバーとの温度差やコロナ対策への価値観の違いが最も大きな悩みになっていることが浮き彫りになったほか、アカペラ文化自体の衰退を懸念する声も多く挙がりました。

ポジティブな点は場所や時間の制約から解放されること

一方コロナ禍でのポジティブな気づきや変化では、特に仕事や家族との兼ね合いで活動できる時間や場所がハードルになりやすい社会人層を中心に、非対面アカペラならいつでもどこでもできるのがありがたいという声が目立ったほか、リモートアカペラや多録といった新しい挑戦を始めるきっかけになったり、じっくりと自分の歌を見つめ直せたことがよかったという意見も多く見られました。
筆者自身もメンバーがロンドンに転勤して5人での活動を余儀なくされていた中でリモートで久々に6人揃って歌えていたりとまさにこうした恩恵を受けている一人でもありますが、コロナ禍が落ち着いた後も以前より時間や場所にとらわれないフレキシブルなアカペラ活動が当たり前になっていくのかもしれません。

調査レポートのダウンロード

本調査の結果は、ご協力いただいた方々へのお礼として、またコロナ禍において今後のアカペラ文化をどう守り育てていくかを一緒に考えていくための基礎資料として、みなさまに広く共有知として活用いただけるようにPDF形式の105ページにわたるレポートにまとめています。
先ほどの概要でご紹介しきれなかった項目も含めて、詳細はこちらのレポートをぜひご覧ください。

調査結果を踏まえたアクション

調査からわかったこと

先述の調査結果より、

  • 対面で歌えない中で、非対面でもリモートや多録などのアカペラ活動ができているかどうかが現状の活動満足度を大きく左右している
  • 4人に1人は非対面アカペラをやりたくても実際にはまだ始められていない
    その一番の理由は基本的なやり方が分からないから
  • また、コロナ禍を機に非対面アカペラを始めた人の4割は既に活動を休止
  • 楽しさが味わえなかったり時間や手間、納得いくクオリティに仕上げられなかったことがその理由となっている
  • コロナ禍でのアカペラの新しいやり方・楽しみ方の情報を集約したサービスが求められている

ことがわかりました。

しかしながら、現状では個々人でオンラインでの練習方法やミキシングのノウハウなどをSNSやnoteなどで公開している方がいる一方で、その有益な情報の多くはタイムライン上でそのまま流れてしまっていたり、それを必要としている人がいざという時にその情報にたどりつけない状況になっていました。

ウィズコロナのアカペラを楽しむための情報を集約しました

そこで、以前オンラインアカペラサークルACAPPELLER.JPの内部向けにβ版として細々と運用されていたサイトを、運営しているよっさんの全面的な協力を得てリモートアカペラ含めさまざまなアカペラの楽しみ方を集約して広く多くの方に活用していける場『うたらぼ』として再整備して公開することになりました。
また、その際多くの方々に記事の提供や執筆などのお力添えをいただき、今最も求められているオンラインでのアカペラの楽しみ方のノウハウを集約して、今アカペラ活動ができていない人や思うようにアカペラを楽しめていない人に対して『困ったらまずはこれを見て!』といえるような入り口となることを目指して以下のような記事をまとめました。

【これだけ知っておけばOK】ウィズコロナのアカペラ手引き

まだまだ足りない情報やこんな情報があったらいいのに!というものはたくさんあるかとは思いますが、一人でも多くの方がアカペラを一緒に楽しめるようにこれからも随時更新していきますので、ぜひご活用いただければ幸いです。

また、うたらぼはいわば“アカペラ版Qiita”というべき、さまざまな方々が自由に自分が持っているノウハウを投稿し閲覧できる開かれた場所を目指しています。
オープン直後の現在は集まっているナレッジもまだまだ少ない状況ではありますが、「コロナ禍でもこんなアカペラの楽しみ方があるよ!」「アカペラに関するこんなTipsがあるよ!」など何か有用な情報をお持ちの方は、それをTwitterにつぶやいてそのまま流れてしまうだけではもったいないですし、ぜひご自身が書いた記事や気になった記事をSNSなどでどんどんシェアしていくことで、アカペラ界の集合知をどんどんアップデートしていっていただけると大変嬉しく思います。

謝辞

最後に個人的な謝辞になりますが、この調査の実査やうたらぼの公開にあたって、回答に協力してくださった1000名を超える方々、ぬ。さんや梅村さんをはじめ拡散に協力してくださったたくさんの方々、実査にあたって協力してくださった大田昌孝さん、集計分析を手伝ってくださったはるやまくん・AKKIさん、うたらぼの公開に向けて尽力してくれたよっさんや現状足りていないナレッジのための記事執筆を引き受けてくださったおいちゃん・けんゆう・たいせーくん・さかてぃさんをはじめとした執筆者の方、記事の提供に協力してくださったハモニポン運営やバラッチさん、アンケート結果を受けたラジオ討論会に出演してくださったゲストの方々や技術面進行面で多大なお世話になったonoshunさん、非力な自分にいろいろな相談に乗ってくださったえりな・みやけん・こーめーさんはじめ支えてくださったAJPの方々、DMで直接応援のメッセージをくださった方々、他にもご協力いただいたここに到底書ききれないくらい本当に多くの方々にこの場を借りて心から感謝申し上げます。

たっきー

東京大学LaVoce OB。JAM2015本選やソラマチアカペラストリート2日目トリ出演のほか、2015年のWAVOC主催チャリティコンサートではゴスペラーズ・Little Glee Monster・TRY-TONEとの共演も果たす。現在はJAMをはじめとした大会・サークルライブなどの審査員や中学校の授業でアカペラを教える取り組みなどの傍ら、映画ソングをアカペラで歌う『osco;picaro』やバーバーショップカルテット『coiffeur』などで演奏活動を続けている。

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