うたらぼ

「和音が原曲となんか違う…」と思った時→”隠し味”があるかも?

らた アカペライズ, 楽曲制作, 編曲, #アレンジ, #採譜, #編曲, #耳コピ,

多くのアカペラ人の皆さんは「原曲が大好きだから、できれば原曲の響きを再現したい」と考えると思います。

しかしいざアレンジして歌ってみた時「ここ、なんか微妙に原曲と響きが違う気がするけど、具体的に言えない…」ということはないでしょうか?

そんな時は、普通に聴くだけでは気づきにくい“和音の隠し味”が原曲に仕込まれているかもしれません。

今回は、僕がこれまで耳コピやアレンジをして「そうだったのか!」という経験をした曲を例に、”隠し味”のいくつかを紹介したいと思います。

音で違いを聴いてもらえるよう、Before(なんか違う)/After(これだ!)という動画も作ったので合わせてご覧ください。

正直、アレンジ初心者の方には難しい内容ですが、モヤモヤしている時の参考の1つになれば幸いです。

隠し味①:部分転調している場合

例:星屑の街(ゴスペラーズ)Bメロ

「歌いながら」の「ら」の和音がポイントです。

[Before] 普通は「ら」のコードはB♭mで歌いたくなりますが、
[After] 実際はB♭Maj7となっています。

曲のキーはD♭ですが、この「ら」だけピンポイントでB♭に転調しています。部分転調は「気が付いたら別世界にいた」みたいな驚きを聴き手に与えるので、原曲を聴いてそんな感覚を覚えたら一度疑ってみて下さい。

採譜の際は、転調するのが一瞬だけなので調号は変えず、臨時記号で対応することが多いです。

隠し味②:分数コードが使われている場合

②③は”セカワラ”を取り上げます。まずは原曲を聴いてみましょう。

楽譜分析に戻ります。

例:世界はあなたに笑いかけている(Little Glee Monster)イントロ

「da da da da da」の和音がポイントです。

[Before] 最初は原曲から聴こえる音を入れてもスカスカでした。
[After] E/G♭という分数コードと判明。2ndと3rdのラインがミソでした。

分数コードは「コード/ベース音」という分数形式で表される和音で、
・コードの中のルート以外の音がベース(例:C/E→ドミソ/ミ)
・コードの中にない音がベース
(例:F/G→ファラド/ソ)
の2種類あります。特に後者は実質テンションコードなのでカッコいい響きになります。「よくわかんないけど音カッコいい!」と思ったら分数コードかもしれません。

隠し味③:ボーカルが伴奏のコードにない音を歌っている場合

例:世界はあなたに笑いかけている(Little Glee Monster)サビ

「世界は」の「は」の和音がポイントです。

[Before] 原曲のコーラスをそのまま入れましたが、何か違う気がします。
[After] 3rdを半音上げたら、原曲の響きに近づきました。

これはかなり難しいのですが、実は

・コーラスの和音→ファ, ラ♭,レ♭(D♭の転回形)
・伴奏の和音→ミ♭,ソ♭,シ♭,レ♭
(E♭m7)

つまり、コーラスと伴奏がそれぞれ違うコードを出しているため、コーラスだけ取り出すと響きが変わってしまうのです。

更にコーラスの“ファ”と伴奏の“ソ♭”が半音でぶつかっていますが、“楽器と声”では音色が違うので、原曲ではぶつかっているように聴こえなかったのです。

コード表は楽器(バンド)のためのものが多いので、原曲のボーカルやハモりと照らし合わせる実は合ってない、ということが時々あります。

ボーカルの音を取るべきか、バンドの音を取るべきか…?はケースバイケースで考え、響きや前後の流れが不自然じゃない方を選択するのが良いと思います(もちろん主メロの音は変えられないので、そこを守った上で総合的に判断します)。

実際この”セカワラ”のサビ、「あなたに」の「に」の音も

・コーラスの和音→,ミ♭ ラ♭,ド(A♭の転回形)
・伴奏の和音→レ♭,ファ,ラ♭,ド(D♭Maj7)

と、コーラスと伴奏の和音が違います。こちらは3rdコーラスの”ミ♭”を”ファ”に変えれば伴奏のコードと合致するのですが、そうすると僕個人的にはちょっと3rdコーラスのラインがヘンになる感じがしたので、”ミ♭”のままにしました。

隠し味④:”離れてるけどぶつかってる”場合

例:ノーダウト(Official髭男dism)イントロ

「No Doubt」の和音がポイントです。

[Before] 普通に聴くとTopの“ラ”が短3度に聴こえるのでF#m7だと思いやすいのですが、何か厚みが足りない感じがします。
[After] 4和音では足りなかったことが判明。長3度“ラ#”を加えてF#7(+9)というコードを作るのが正解でした。Topの”ラ”は短3度ではなく、9度を半音上げた”味付け”だったのです。

「マイナー系だと思っていたらメジャー系だった」というビックリなケースでした。

“ラ”“ラ#”は隣り合っているとぶつかってビリビリした音になりますが、“ラ”がオクターブ上がることでビリビリせず、オシャレな関係性に変わるというマジックが起きていました。

このように一見離れているけど実はぶつかっている和音も実質テンションコードになるので、アレンジでも時々活用できます。

まとめ

こういった手の込んだ和音は耳だけでコピーするのは結構難しいです。

コード表市販のバンドスコア等を参考にするのがセオリーですが、それでも③のようにコードをそのままアカペラ化するのが難しかったり、また演奏者のレベルに応じて簡略化や移調がされている場合があったりするので、(合唱とバンド/初級と中級など)異なる形態の楽譜を見比べるのが良いと思います。耳コピや音楽理論に強い先輩に質問してみるのも手でしょう。

また原始的な方法ですが、つまるところコーラスラインのちょっとした違いなわけですから、楽譜ソフト上で”音を探る→再生する”を繰り返すうちに正解に辿り着くこともあります。

これらのやり方を組み合わせて、納得いく採譜にチャレンジしてみて下さい。

お知らせ

AJP編集部の連載企画「私のアカペラアレンジの進め方」に寄稿させて頂きました。色んなアレンジャーさんのやり方を紹介する企画なので、ぜひシリーズで読んでみて下さい。

らた

2011〜2014年度、早稲田大学StreetCornerSymphonyに所属。 2018年より名古屋の社会人アカペラサークルA-radioに所属。 また音楽投稿サイトnanaで「カペ羅太」の名前で多重録音などを不定期で投稿しています。 https://nana-music.com/users/8975107

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