うたらぼ

リモートアカペラ奮闘記 〜2020年秋〜

AKKI クリエイティブ, 編曲, 音響, #あいみょん, #ミキシング, #リモートアカペラ, #編曲, #裸の心,

うたらぼをご覧の皆様、おはこんばんにちわ。
AJPでアカペラ音源のミキシングを手掛けさせていただいてます、AKKIと申します。
本記事ではリモートアカペラの企画から実行までについて作業内容と気づいたこと、改善点をまとめます。

使用した楽曲について

曲はあいみょんの「裸の心にしました。渾身のバラード。
アレンジ前にインタビューを読み漁りましたが、とても大切に時間を掛けて仕上げられた曲でした。原曲の意図をリスペクトしながら作業しました。

作成した音源

Soundcloudにて公開中です。
下記リンクの再生ボタンから聴けます。

作業の大まかな流れと所要時間

  1. アレンジ仮完成:2週間
  2. メンバー募集:2日
  3. アレンジ最終化:1週間
  4. 自分の歌の録音:2時間
  5. DAW上での編集:20時間くらい

アレンジ仮完成後、AJPの参加者さんの中からオーディオインターフェースで宅録出来ること(スマホ録音のリモートアカペラの音質の悪さが嫌だった)を条件に楽譜を公開の上募集しました。仮完成、と言いながら実際にアレンジがしっかり固まったのはメンバー確定後となりました。締切の概念とプレッシャーが創作には重要と再確認しました。

アレンジ過程でやったこと

MIDIファイルを購入してラフな構成を検討

  • ヤマハデータミュージックで曲のMIDIデータを購入し、DAW上に貼り付けてどの楽器の音を参考にするか、アレンジの構成を検討しました。

曲の長さの変更

  • アカペラだと5分という原曲の長さは難しい、一方で歌詞の展開を考えると歌ってる部分は切れなかった(歌いたかった)ので前奏と間奏を縮めて4分20秒程度まで短縮しました。

重視したこと

  • 曲の印象的な裏打ち(トンって音)の音をVpに再現してもらうと音真似をして愉快な感じに聴こえそうと感じ、コーラスを裏拍で入れて表現しました。
  • コーラス3人に見せ場を設定した。1stにはBメロでのリードとのハモリと間奏、後奏でのソロ、2ndには間奏でのソロ、3rdではサビのリードとのハモリとサビに入る「いーまーもー」など一人だけ上昇する音形にしました。
  • Bメロで入れがちなベルトーンを間奏に配置。
  • サビは出来るだけ字ハモを設定した。そのために原曲にはないフレーズも作りました。
  • 原曲のアレンジメントの意図(素朴な感じ)からかけ離れ無いように、コードを凝りすぎないようにしました。

録音後に気づいた問題点と解決方法

問題点

  • どのように歌うのか個人任せにしていたため、対面練習では当然のように揃えるであろう部分が噛み合っていなかった。
  • クリックを用いた録音についての意識の差があり、リズムの取り方が合ってなかった。
  • 録音後に記譜の間違い(歌詞)に気づいて録音し直してもらった。
  • リードボーカルは伴奏が揃ってから再度歌いなおしたテイクを使った。

改善するためには

  • 配布する楽譜に解釈の書き込みを入れるか、仮歌も合わせて送る。
  • リズム感を合わせるためにボイスパーカッションの録音を先に作ってもらいそれに合わせる。
  • クリックに合わせて歌う意識について事前に整理する(拍の頭を意識して独自にズレないこと)
  • リードボーカルは他パートの音源が出揃ってから歌ったほうが良いかもしれない。
  • 楽譜の最終確認はアレンジャーがしっかり歌って実施すること

音源編集について

意識したこと

  • バンドのオーディション、ライブ作品ではないので、音楽として聴きやすいものを目指した。

工程について

ざっくりとした工程は以下の通りです。

  1. Izotope RX7 Standardでノイズとブレスを消去
  2. リードとボイスベース、ボイスパーカッションの縦とボリュームを調整
  3. コーラスの縦とボリュームを2で揃えたものにあわせる
  4. Melodyne 5で伸ばす長さが異なるところと若干の音程補正
  5. 強調したい部分のボリューム調整(特にコーラスの子音の強調)
  6. Ozone 9でマスタリング

編集について:プラグインなどのちょっと技術的な話

  • ミックスは演奏そのものとは違った「聴きどころ」を作るように心がけています。今回で言えば3:32の「裸の心」とリードボカールが歌っているところでリバーブをここだけ抜いて劇的な見せ場を作りました。
  • ベルト−ンを歌っている部分ではパートの定位を音の順番に左右に流れるように設定しました。
  • 原曲のボーカルは意図的に音割れしている。ニュアンスを再現するためにIkmultimedia T-Racks Saturator Xを使ってリードをカリッとさせました。
  • コーラスはEQ処理で声の特徴をかなりカットしました。
  • ボイスベースとボイスパーカッションは録音時点で音作りが出来ていたので、コンプ後のEQと低音補正プラグインで軽く味付けをしました。
  • Reverbは4種類。
    • 全てのトラックに基本設定として2種類を混ぜました(Vocal Hall+Short plate)。
    • Voice percussionにはBassドラム設定のReverbを掛けました。
    • 間奏のソロパートにはMidium plateを掛けました。

縦を揃える方法について

編集途中のスクリーンショットです。
  • 音程調整プラグインを使わなくても縦は解決できるところが多いのです(伸ばす場所以外)。
  • リード(赤)、ボイスベース(水色)、ボイスパーカッション(青)でまず合わせました。パーカッションとリードが特にクリックに対して適切に歌われていたのでほとんどカットしていません。
  • その後、かなりコーラスを切り刻んでいることがわかります(オレンジ、黄、黄緑)。ただ、すべての人の縦をずらして合わせると人工感が出るため、現Verでもかくつき感はあってもそれ以上は詰めていません。
  • 拍の頭は切り貼りで合わせて→伸ばすところはMelodyneで調整しました(ちなみに自分のパートは直すよりも録音し直しました。編集者特権!?ですね)。

最後に

長文をお読みいただきありがとうございました。
対面練習を重ねしっかりとした録音環境で録音し編集するのが最善です。
しかし現在の社会状況で「アカペラ演奏での作品」をある程度の質で制作できる可能性が見えたことは自分にとっても大きいことでした。また作ってみて気づきがあればまとめてみたいと思っています。この記事がリモートアカペラを作成する時の一助になると幸いです。

Special Thanks

今回の音源作成に参加いただいた、Rikaさん、みけさん、Ryuさん、空の青さん、Kazumaさん、ありがとうございました。
そしてあいみょんの偉大な曲に感謝を!

AKKI

バンドの録音作品を自主製作したのをきっかけに、アカペラのミキシングとマスタリングを学んできました。 AJP内でこれら手法のノウハウ交換を行っています。 最近手掛けた作品はこちらにまとまっています。 https://www.foriio.com/akki-dtz

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